標準予防策
感染症と3つの要因
感染とは、環境中に存在する様々な微生物のうち、病気の原因となるウイルスや細菌、真菌(カビ)などが、宿主*となるヒトや動物の体内に入り、臓器や組織で増殖することです。その結果、発熱や下痢などの症状が出ることを感染症と言います。感染しても、必ずしも症状が出るとは限りません(保菌状態)。また、健康なヒト(宿主)に対しては病原性を発揮しない病原体が、抵抗力が弱っている時に病原性を発揮しておこる感染を、日和見感染と言います。
感染が成立するには、原因となる病原体の存在(感染源)、その感染症を引き起こす可能性を持つヒトの存在(宿主)、そして病原体が宿主に入り込むための経路(感染経路)の3つの因子が必要です。そのため、感染予防には、これらを排除することが重要です。
*宿主:ウイルスや細菌、真菌などが寄生する相手の生物
図:感染が成立する3つの要因
(厚生労働省老健局,介護現場における感染対策の手引き 第2版を参考)
標準予防策(スタンダードプリコーション)とは
感染症の有無に関わらず、すべての人に対して、血液、体液、汗を除く分泌物、排泄物、損傷した皮膚、粘膜等の湿性生体物質は、感染の可能性があるとみなして対応する方法を標準予防策(Standard Precautions、スタンダードプリコーション)と言います。従来は、病院内の感染予防策として用いられてきましたが、近年は、介護分野を含め、感染の可能性があるものを取り扱う場合に必要な、基本的な感染予防策となってきています。
標準予防策の具体例
- ケアに使用した器具の洗浄・消毒
1度着用してケアした手袋のまま、他のケアに移ったり、そのまま清掃をしている職員さん、よく見るけど・・・
手袋は、1ケア、1作業ごとの交換が鉄則じゃ。
手袋にはピンホール(目に見えない小さな傷や孔)があるかもしれないし、作業中に汗をかいて手袋内で常在菌が増殖している可能性もある。感染を“拡げない”ために、個人防護具はその目的が終わればすぐに外し、手指衛生を忘れちゃいけないよ。
【ここをおさえトク】
感染対策で重要なのは、
1.感染源の排除・・・感染源に直接触れない
2.感染経路の遮断・・・感染源を持ち込まない、拡げない、持ち出さない
3.宿主の抵抗力の向上・・・日頃からの健康管理、本人や家族のワクチン接種 等
また、感染の有無に関わらず、汗を除く血液などのすべての体液は、感染の可能性があるものとして予防策をとり、粘膜や発疹や傷など損傷のある皮膚も、素手で触らないように注意します。
手指衛生の徹底と、必要に応じた個人防護具の活用を心がけましょう!
・厚生労働省_老健局:介護現場における感染対策の手引き 第2版. 令和3年3月, p.6-12.
・厚生労働省_老健局:介護職員のための感染対策マニュアル 施設系. 令和3年3月, p.3-5.
・矢野邦夫. 向野賢治 訳・編. 改訂2版 医療現場における隔離予防策のためのCDCガイドライン-感染性微生物の伝播予防のために-, メディカ出版, p.117-123.