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第4回:糖尿病について<前編>(ブドウ糖の性質と体内での利用)

こんにちは!今回から2回にわたり、近年も患者数が増加傾向にあり、肥満とも関係深い『糖尿病』について取り上げます。初回は、糖尿病の重要な指標である「血糖値」に関係する「ブドウ糖の性質と体内での利用」についてご紹介します。


ブドウ糖とは

分子式C6H12O6で表される水溶性で甘味を有する物質です。ブドウ糖は穀物や果物などに含まれており、これらを含む食物を摂ると、小腸より速やかに吸収され、脳や筋肉などの活動のエネルギー源として利用されています。一方で、過剰に摂取すると肥満、糖尿病、血管や神経の障害などを引き起こします。健康診断や糖尿病などで登場する「血糖値」とは、血液中のブドウ糖の濃度のことです。

ブドウ糖は炭水化物の仲間

図1は、栄養表示基準のもとに炭水化物を分類したものです。単糖と二糖からなる糖類、糖類に多糖類及び糖アルコールなどを加えたものが糖質、糖質に食物繊維を加えたものが炭水化物となります。ブドウ糖は糖類であり、広義には炭水化物に分類されます。図1の分類を覚えてくと便利ですよ。
例えば食品表示に「糖類ゼロ」の記載があっても、多糖類(カロリー有り)などの糖質を含む可能性があることが分かります。


図1:炭水化物の分類

表は、糖の構成の一例について示したものです。

表:糖の構成


構成する糖
単糖
(一つの糖で構成)
ブドウ糖
果糖
ガラクトース
ブドウ糖のみ
果糖のみ
ガラクトースのみ
二糖類
(二つの単糖が化学結合)
麦芽糖
ショ糖
乳糖
ブドウ糖+ブドウ糖
ブドウ糖+果糖
ブドウ糖+ガラクトース
多糖類
(複数の単糖が化学結合)
デンプン ブドウ糖+ブドウ糖+・・・

炭水化物の消化

多糖類、糖類を含む食品を摂るといずれも小腸等の消化酵素により、ブドウ糖、果糖、ガラクトースにまで消化されますが、食物繊維、糖アルコール、人工甘味料等は消化されません。
消化された多糖類、糖類は小腸から吸収され重要なエネルギー源になります(カロリー有り)。一方、食物繊維などは消化吸収されず、ほとんどエネルギー源になりません(ほとんどカロリーなし)。
食物繊維は、腸内環境やお通じに良い効果を及ぼしますが、最近流行りの低GI食にも関係しています。

GI(グリセミックインデックス(血糖指数)の略)とは
食品を摂った時の血糖値の上昇のしやすさを示す指標です。指数が低いほど血糖値の上昇を抑える傾向があります。炭水化物では白米、うどん、食パンは高GIの食品。食物繊維を多く含む全粒粉パン、そば、玄米などは低GIの食品に分類されます。低GⅠ食品は血糖値の急激上昇を抑えるため、糖尿病やダイエットに良いと言われています。

糖の吸収と利用のしくみ

STEP1:
消化された糖は小腸で速やかに吸収され血管を通じて肝臓に送られ、膵臓から分泌される「インスリン」というホルモンの働きにより肝臓に取り込まれます。
STEP2:
肝臓に取り込まれた糖は次の2つのルートで処理されます。

  1. ブドウ糖や他の糖はインスリンの作用によりグリコーゲンに変えられる。(ブドウ糖不足時は、ブドウ糖に変換され利用)
  2. ブドウ糖の一部は肝臓を素通りして血管を通じて全身の組織に送られる。

STEP3:
肝臓から放出されたブドウ糖は血管を通じて全身の細胞に送られ、「インスリン」の働きにより細胞内に取り込まれエネルギー源として消費されます。
また、肝臓や筋肉では、ブドウ糖からグリコーゲンを作り一定量を貯蔵しますが、過剰に糖を摂りすぎてグリコーゲン貯蔵量の限界を超えると、脂肪として蓄積され肥満につながります。

ブドウ糖以外のエネルギー源として、脂肪から作られるケトン体、脂肪酸があります。近年、ダイエットや糖尿病の食事療法(糖質制限)に関連して注目されています。

血糖値調整のしくみ

ここまでは、摂食における血糖値の上昇とインスリンによる「血糖値を下げる」しくみを説明しましたが、体内には「血糖値を上昇」させるしくみも備わっています。すなわち、空腹が長らく継続する時や激しい運動をすると血糖値が下がり、ブドウ糖が不足した状態になります。この状態を低血糖(血糖値70mg/dl以下)と呼び、重度の場合はけいれんを生じたり、昏睡状態を生じます。そこで、このようなことが起きないように、血糖値が下がってくると、例えば膵臓からグルカゴンというホルモンが分泌され、グリコーゲンをブドウ糖に変換し「血糖値を上昇」させます。

血糖値が上がると(食事をとった時)・・・
インスリン」を分泌してブドウ糖を細胞内に取り込み血糖値を下げる

血糖値が大きく下がると(空腹が続くなど)・・・
ホルモンの一種である「グリカゴン」などを分泌して、肝臓等に貯蔵されているグリコーゲンをブドウ糖に変え、血糖値を上げる

このような体内の血糖値調節のしくみにより、健康な人の血糖値は100mg/dlを中心に70~140mg/dlの範囲で維持されています。

参考資料:
・杉山英子・小長谷紀子・里井恵子. 初めて学ぶ健康・栄養系教科書シリーズ5 第2版, 化学同人, 2016年.
・鈴木吉彦. よくわかる最新医学 糖尿病 最新治療・最新薬, 株式会社主婦の友社, 平成26年.

筆者プロフィール

山中 巌

薬剤師、薬学修士。サラヤ株式会社 管理薬剤師

経歴
1981年 大阪薬科大学(現大阪医科薬科大学)卒業
1983年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程前期修了
製薬会社にて製剤研究などに従事。定年退職後、調剤薬局勤務を経て、現在に至る。