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第16回:口が乾く!それ、ドライマウスかも?

乾燥が気になる冬場。お口の中の乾きも気になっている方、それは「ドライマウス(口腔乾燥症) 」かもしれません。ドライマウスは、唾液の分泌量が減ることなどにより、口が乾く症状のことを言い1)、潜在的な患者は、約3,000万人存在する可能性があるとの報告があります2)。性別では女性、年齢では高齢者に多く見られますが3)、近年、ストレスなどによる若年層の患者も増えています1)


ドライマウスになると、どうなるの?

ドライマウスにはさまざまな症状があり、次のような症状が挙げられます1,4,5)

  • 口の乾き
  • 口の中のネバネバ感、ヒリヒリ感
  • 虫歯や歯垢の増加
  • 強い口臭
  • 味覚の異常
  • 舌の炎症(ひび割れ)と痛み
  • 舌の痛みにより、食事や会話がしづらい
  • 肺炎などのリスクが上がる

また、ドライマウスの原因が、薬の副作用、糖尿病、自己免疫疾患などによる場合もあるので注意が必要です。

ドライマウスはなぜ起こるの?

唾液の成分と役割1,4,6-8)

ドライマウスは、主に唾液の分泌量の低下によるものです。そこで、唾液がどのような働きをしているのか確認しておきましょう。
唾液は、口の中の複数の唾液腺から分泌され、1日になんと1~1.5Lも分泌されています。その成分は水を主成分として、ムチンや抗菌作用のある物質、無機塩、上皮成長因子、アミラーゼなどを含みます。唾液は、食べることや口の中の健康を維持することなど、実に重要な役割を担っています。そのため、唾液の分泌量が減ると、口の中の乾燥の進行、唾液による清掃効果の低下や有害な菌の増殖などにより、様々な症状が生じるのです。

唾液の役割
  • ウイルスや菌をやっつける
  • 食べかすなどをまとめ、洗い流す
  • 口の中を中性に保つ
  • 歯や粘膜の保護・修復する
  • 味物質を溶かして、味を感じやすくする
  • デンプンを糖に消化する

唾液の分泌が減る原因

それでは、唾液の分泌量が低下したり、口の中が乾燥する原因は何でしょうか?その原因は、大きく以下の3つに分類されます5)

1.カラダの変化による唾液量の低下
加齢などによる唾液腺の機能低下や頬の噛む筋肉の衰え、ストレス
2.薬や病気による唾液量の低下
薬の副作用、糖尿病、シェーングレン症候群などの自己免疫疾患、唾液腺の病気や口腔周辺の放射線治療
3.生活習慣による唾液量の低下、口腔内の乾燥
飲酒や喫煙による唾液分泌量低下、口呼吸

加齢によるものから、精神的なもの、薬の副作用、糖尿病や自己免疫疾患によるものなどさまざまですが、薬やストレス、筋力低下、加齢で多くみられます。また、原因は単独とは限らず、複数が重なって起こっている場合も多い1)ため、口の乾きを軽視せず、症状がある場合は、早めに歯科口腔外科や耳鼻咽喉科などを受診しましょう。


ドライマウスの治療1,9)

医療機関では、検査・診察により原因を特定して治療が進められますが、以下のように、原因の除去の難しさによって、治療方針が変わります。

1.原因が除去できそうなら、可能な限り除去します。
例えば、薬の副作用と考えられる場合は、薬の中止または減量などが検討されます。
2.原因が除去できるかもしれない場合(唾液腺周辺の筋力低下、ストレス、口呼吸など)、生活指導などを中心に治療が行われます。
3.原因の除去が困難な場合は、症状を改善します。
例えば、シェーングレン症候群や加齢などで、治療や原因の除去が困難な場合は、乾燥状態を和らげるために唾液腺分泌促進薬、気道粘液の分泌改善薬(風邪薬に配合されている成分)、人工の唾液を用いた薬物療法および生活指導が行われます。

なお、生活指導や口腔衛生指導は、治療の基本になります。具体例は次の通りです。

唾液腺を刺激し唾液の分泌を促す
  • 食事の時はよく噛む(噛み応えるのある食物)、シュガーレス(虫歯の原因となる糖をほとんど含まない)のガムを噛む、唾液腺の周りの筋肉を鍛える、唾液腺のマッサージを行う 等。
  • ストレスが続いている場合は生理的に唾液が出ないため、リラックスを心掛ける。
口の中を保湿する
  • 口腔用保湿ケア剤で保湿する、こまめに水を含み口の中を潤す。
唾液の蒸発を抑える
  • 口を閉じて眠る。そのためのいびきや歯ぎしり改善には、マウスピース等の装着が有効とされる。

最後に

先日、知り合いからドライマウスの相談を受ける機会がありました。高齢者や介護が必要な方は、ドライマウスになると、身の回りのお世話をされる方や介護施設の方との会話がしづらくなり、“こころ”が乾く原因にもなります。症状のある方は早めに治療を受けて、“こころ”豊かな生活を送っていただきたいと思います。

主な参考文献:
1)阪井丘芳.ドライマウス 今日から改善・お口の渇き:医歯薬出版株式会社,2010.
2)真下純一ら.口腔乾燥状態と唾液の性状との関係 第1報 健康成人の場合.老年歯学,2008;23,319.
3)三輪恒幸ら.口腔乾燥症(ドライマウス)の臨床統計的検討 東京歯科大学千葉病院におけるドライマウス外来について.日本口腔検査学会雑誌 2009;1(1):40,https://ir.tdc.ac.jp/irucaa/bitstream/10130/850/1/1_40.pdf(参照2023-11-09)
4)厚生労働省:e-ヘルスネット ドライマウス(どらいまうす):https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/teeth/yh-038.html(参照2023-11-09)
5)広島赤十字・原爆病院 病院ブログ:口腔乾燥症(ドライマウス)について2009.02.13:https://www.hiroshima-med.jrc.or.jp/blog/blog-wisdom/blog-4062/(参照2023-11-09)
6)石川達也.唾液の科学 第1版:一世出版,1998.
7)森永宏喜.歯周病はすぐに治しなさい:さくら舎,2020.
8)厚生労働省:e-ヘルスネット 口・歯の機能:https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/teeth/h-01-001.html(参照2023-11-09)
9)北海道薬剤師会:口腔乾燥症(ドライマウス)2010.11:http://www.doyaku.or.jp/guidance/data/H22-11.pdf(参照2023-11-09)

公開日:2024年1月16日


筆者プロフィール

山中 巌

薬剤師、薬学修士。サラヤ株式会社 管理薬剤師

経歴
1981年 大阪薬科大学(現大阪医科薬科大学)卒業
1983年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程前期修了
製薬会社にて製剤研究などに従事。定年退職後、調剤薬局勤務を経て、現在に至る。