第7回:自己注射 使った後の管理も大事!
高齢化と医療技術の進歩にともない、在宅医療が進展し、自己注射の導入例が増えています。
自己注射とは、医師の指導のもと、患者さんやご家族などがご自宅などで薬を注射する行為で、糖尿病や骨粗しょう症、関節リウマチ、C型慢性肝炎、乾癬、パーキンソン病などのお薬があります。
自己注射は、患者さんにとって医療機関へ通う負担などが軽減されるというメリットがある一方で、デメリットもあります。例えば、患者さんやご家族の方などが注射を行うため、誤った方法で注射してしまうことや、注射針を扱うため、針刺し切創のリスクなどがあります。
そこで、自己注射において注意していただきたい点をいくつか挙げましたので、参考にして下さい。
*実際の操作は、医師や薬剤師の指導に従ってください。
手指衛生の励行
感染防止のため、自己注射を行う前は手指衛生を行いましょう。
操作のポイント
インスリン白濁製剤は均一にしてから注射
インスリン製剤には、薬の成分により濁っている製品がありますが、このお薬は、保管すると次第に成分が沈殿してしまいます。使用時はあらかじめ薬液の濃さが均一(白濁)になるように容器を振ってから使用しましょう。
注射部位は毎回変える
インスリンのように注射を繰り返す場合は、説明書に記載の部位の範囲で、毎回異なるところを注射することが必要です。同じ部位に繰り返し注射すると、注射部位が固くなり、注射しづらくなったり薬の吸収が不安定になるためです。
注入ボタンの保持時間を守る
ペン型製剤などでは、注入ボタンを押した状態で保持する時間を記載しているものがありますが、決められた時間より短い時間で注射器を引き抜く方がいらっしゃいます。保持時間が短いと必要な薬液量を皮下に注入できません。保持時間を守りましょう。
注射針の取り扱いと廃棄方法に要注意
使用済みの注射器や注射針などは、在宅医療廃棄物であり廃棄方法(注射針の回収容器や提出先など)が定められています(地域により対応が異なる場合があります)。
その理由は、例えば注射針(あるいは針を含む容器など)は、鋭利な金属加工物であり、血液や薬品が付着しているので、廃棄作業などでの手指への針刺し事故や刺し傷口から病原体への感染などの危険性があるためです。
しかしながら、現状は廃棄方法が守られず、一般ごみとしてポイ捨てされ、廃棄物処理業者の針刺し切創事故が発生しています。また、注射針を取り扱う、患者さんやご家族、施設のスタッフ、医療機関や薬局のスタッフの方においても針刺し事故は起こっています。
そこで、針刺し事故防止のため、注射針を取り扱われる方にお願いしたいことを2つ挙げます。
1.廃棄する際は、注射針の危険性と社会的影響を認識し、決められた廃棄方法を守りましょう
回収容器なら何でもいいというわけではありません。
例えば、牛乳パックに詰めると、牛乳パックを針が貫通、あるいは、牛乳パックのフタが開いて針が飛び散ってしまう可能性があります。回収容器は、針が貫通しない、しっかりした材質のものや、容器から針が容易に飛び散らないように、しっかりフタができるものを選ぶ必要があります。
廃棄方法が不明な場合は、お薬の説明書を参照するとともに、かかりつけ医療機関や薬局、お住まいの市区町村に問い合わせ、対応して下さい。
2.注射針の危険性を十分留意し、慎重に取り扱いましょう
少し作業しにくくなりますが、使い捨て手袋を使用するのも対策になります。
最近は、使用済み注射針を回収する専用容器が一般向けにも販売されています。
専用容器は、
- 注射針を取り外す際や容器へ投入する際の針刺し切創防止ができる
- 針が容器を貫通しにくい材質
- ロック機能を持ち、容器からの注射針の散逸防止ができる
などの機能を有するものがあります。このような便利なグッズを活用するのも対策の一つです。
主な参考文献:
・山内恵史(2009) 高齢者糖尿病患者におけるインスリン自己注射の問題点の解析,日本老年医学会雑誌,46(6),p.537-540.
・公益社団法人日本糖尿病協会.“廃棄物適正処理Q&A”,最終更新日:2022年6月10日. https://www.nittokyo.or.jp/modules/doctor/index.php?content_id=48 ,(参照 2022-08-30)