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感染対策コラム

口腔ケアと誤嚥性肺炎

※本コラムは、2016年3月に執筆されたものを一部編集したものです。

"口腔ケア"で誤嚥性肺炎が激減、糖尿病や心臓・血管疾患などの重症化を防ぐ。口腔内の清掃・除菌や嚥下機能の維持など必要な対策の積極的な導入、定着化を!

今季は変異した新型ノロウイルスが出現し、大流行が懸念されました。しかし、ノロウイルスなどの感染性胃腸炎は、2月に入って発症者数が減少し、流行のピークが過ぎた感があります。また、1ヶ月遅れで流行したインフルエンザも、2月に、同じ時期として過去10年間で2番目に多い200万人を超える発症者(推計数)が出た週もありましたが、その後、発症者が減少に向かっています。とは言え、感染性胃腸炎やインフルエンザの集団感染は例年並みのペースで、国内各地の飲食提供施設や福祉介護施設、医療施設などで散発しています。
しかし、昨季までと異なり、新聞やテレビ等を見る限り、インフルエンザや感染性胃腸炎の集団感染が発生した医療施設や福祉介護施設などで、複数以上の発症者や死者が出たという報道は少なくなっています。インフルエンザや感染性胃腸炎を発症して、呼吸不全や誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こしたり、死亡する人(利用者、患者、職員など)が明らかに減少しています。
これは、ここ5年来、医療や介護の現場で、健康保持や感染予防を目的とした「口腔ケア」の取り組みが、感染予防対策の中に組み込まれて積極的に行われ、着実に効果を挙げていることが一つの要因と思われます。


口腔ケアが定着した医療・介護の現場では、誤嚥性肺炎だけでなく、他の感染症や食中毒の発症者も減少しています。口腔ケアを日常、定期的に実施して、誤嚥性肺炎の防止だけでなく、他の感染症や重篤な全身疾患の発生予防にも大きな効果を挙げている事例が、関連学会や新聞等で数多く発表(報道)されています。
これらの調査研究結果から、口腔内細菌に起因する虫歯や歯周病と、糖尿病や心臓・血管疾患などの全身疾患は、相互に影響を及ぼし合い、それぞれの症状をより悪化させていることが明らかになっています。さらに口腔ケアの充実が、医療費削減につながる事例も増え、口腔ケアの必要性、重要性が、関係者の間でより一層高まっています。
自施設で、感染症や食中毒の予防に効果がある「口腔ケア」に積極的に取り組んで、口腔内の細菌やウイルスが原因となった感染症(誤嚥性肺炎など)や食中毒、上記全身疾患の悪化などによる死者が出ないようにして下さい。

掲載:2016年3月


筆者プロフィール

横山 浩

1970年 大阪大学大学院薬学研究科博士課程修了 薬学博士、薬剤師

職歴
大阪府立公衆衛生研究所(薬事指導部、現食品医療品部)、(社)大阪府薬剤師会試験検査センター、サラヤ株式会社
学会・研究会活動
日本薬学会、日本環境感染学会、日本防菌防黴学会(環境殺菌工学研究部会)、環境管理技術研究会