腸管出血性大腸菌
※本コラムは、2019年8月に執筆されたものを一部編集したものです。
腸管出血性大腸菌感染症、保育施設などで集団発生が相次ぐ。死者が発生、感染予防対策(手洗い、消毒など)の徹底を!
腸管出血性大腸菌(EHEC)感染症の発症者が、国内各地で多発しています。
今季も、4月頃からEHEC感染症(O157、O111、O26など)の発症者が増え始め、7月21日の時点で計1,460人が報告されています。そして、昨季に続き、今季も保育施設などでEHEC感染症の集団発生が相次ぎ、新聞やテレビ等で報道されています。
筆者が知る範囲で、4月末に京都府の保育所に通う園児5人が、EHEC感染症(O157)を発症し、うち1人が死亡しています。また、6月に入り、京都府の児童福祉施設に通う1歳の男児5人が、EHEC感染症(O103)を発症しています。さらに7月に入って佐賀県と長崎県の認定こども園、岐阜県の幼稚園、群馬県の保育施設で、EHEC感染症(O157、O111など)の集団発生で、園児と保護者ら計 53人が感染(発症)しています。前記児童福祉施設や認定こども園、幼稚園、保育施設の集団発生で、死者は出ていないようです。
上記6施設とも、食品(給食など)による食中毒と断定されておらず、感染源や感染経路は、特定されていないようです。管轄の保健所は、当該施設に対し、手洗いの励行(食事前やトイレ後など)、トイレの清掃、汚物(糞便など)の適正処理、接触感染を引き起こす恐れがある場所(部位)・物品類の消毒など二次感染防止対策の徹底を指導しています。
今季(1~6月)は、EHEC感染症の集団発生例として、6月16日までに上記6件の他、岐阜県の保育施設(O157)と飲食チェーン店(O157)、奈良県の保育施設(O157)、埼玉県の飲食店(O157)、静岡県の飲食店(O157)等が、自治体から報告されています(国立感染症研究所の「注目すべき感染症;腸管出血性大腸菌感染症」、6月28日掲載から)。昨季(2018年)も、保育施設などでEHEC感染症の集団発生が相次いで報告されています。
近年、EHEC感染症は、上表の食品を介しない二次感染(いわゆる"ヒト→ヒト感染")による集団発生が増えています。
EHEC感染症は、少ない菌量でも感染し、発症します。EHECに感染しても、発症しない人も多くいます。EHEC(とくにO157)は感染力や病原性が強く、乳幼児や子どもが発症した場合、溶血性尿毒症症候群(HUS)等の重い症状を併発し、死亡することがあります。
保育施設では、感染症や食中毒に対する抵抗力が弱い児童、乳幼児が、集団で生活しています。感染(発症)者(いわゆる"保菌者")がいると、保菌者を介して感染が拡大し、多数の二次感染者が発生する恐れがあります。これを防ぐため、二次感染予防対策の推進、徹底が、より重要になります。
EHECの感染予防対策として、
- 手洗いを励行する
- 食品(食材)の十分な洗浄、加熱調理を行う
- 調理器具・食器類の洗浄と消毒、適切な使い分け
- オムツ類や汚物(糞便など)は、使い捨ての手袋を着用して、適正に処理(消毒、廃棄)する
- 糞便に汚染された衣服やタオル等は、煮沸や薬剤で消毒する
- 共用物品(玩具、遊具類)や手すり、ドアノブ、トイレの便座など手が触れる場所(部位)は、こまめに消毒する
- 日頃から園児や職員等の健康状況をチェックして、感染(発症)者の早期発見と隔離、受診、治療に努める
などの対策が必要です。
自施設で取り組む感染症対策(食中毒を含む)について、二次感染を防ぐため、今一度再点検して、問題点があれば、速やかに是正(改善)して下さい。
腸管出血性大腸菌による感染症(食中毒)は、例年、7月から9月にかけて感染(発症者)が多発しています。
保育所や幼稚園などで、腸管出血性大腸菌による感染の発生(拡大)を防ぐため、上記手洗いや消毒など必要な二次感染予防対策を推進、徹底して下さい。
腸管出血性大腸菌の感染予防対策などについて、厚生労働省の「腸管出血性大腸菌Q&A」や「保育所における感染症対策ガイドライン(改訂版:2018年3月)」などで記されており、参考にして下さい。
掲載:2019年8月