爪白癬(水虫)
※本コラムは、2019年7月に執筆されたものを一部編集したものです。
夏季は「水虫」に注意、高齢者は"爪水虫(爪白癬)"で歩行困難や転倒などのリスクが。早期治療と予防の徹底を!
6月末から蒸し暑い日々が続いています。このような梅雨から夏にかけて高温多湿な時期は、白癬菌(トリコフィトン属)が増殖しやすく、その対策(皮膚の清潔保持、環境衛生管理など)を怠ると、水虫の発症者が増えます。
足がかゆい 水虫は、感染すると非常に厄介で、その治療に悩まされ、自分だけでなく、他人まで不快な思いにさせます。
水虫は、カビ(皮膚糸状菌)の一種である白癬菌によって引き起こされる感染症(皮膚真菌症)です。白癬菌が、足の裏や足指間、足の爪、手のひらの皮膚表面にある角質層などに侵入して、角質や爪の主成分であるケラチンという蛋白を栄養源にし、増殖することによって引き起こされる感染症です。
水虫は、発症する部位(足、爪、手など)によって、「足白癬」や「爪白癬」、「手白癬」などと呼ばれています。
近年、水虫の感染者は一向に減少しておらず、日本人の4~5人に1人が、足などに何らかの水虫に罹患していると言われています。
そして、ここ数年、爪の水虫(爪白癬)に罹った人(とくに高齢者)が、加齢などで下肢機能が低下する中で、歩き方に異変が生じ、転倒するなどのケースをよく見かけます。足白癬が、転倒や歩行困難になる原因の一つになっている可能性があります。
体力(免疫力)の低下や加齢に伴う足の血行障害が生じると、白癬菌が皮膚の角質内に侵入し、さらに爪の中に入り込んで"爪白癬"になります。爪白癬は、かゆみなどの症状がなく、靴を履いた時に痛みを感じたり、歩行に支障が生じるなど、症状がひどくなるまで気づかない人も多くいます。爪白癬の症状が進行すると、爪が白色や黄色に変色し、爪が厚くなったり、もろくなり、そのまま放置しておくと、爪が変形したり、剥がれてしまいます。
足の親指などが、爪白癬に感染、罹患した場合、足の指が地面に付き難くなり、バランスを崩したり、すり足になったりして、転倒する可能性があります。爪の本来の機能が十分に果たせなくなり、足先に力が入らずよろけてしまい、さらに爪が剥がれることで、歩行困難に陥る恐れがあります。
このように爪白癬に罹ると、高齢者は、下肢機能が低下し、歩き方に異変が生じ、転倒や歩行困難などのリスクが高くなります。
そのため、高齢者の健康管理の一環として、日頃から爪のケアと、治療を並行して行って、爪白癬発症者の完治と、感染の拡大を防ぐ必要があります。
毎日、足を洗うなど皮膚の清潔保持に加えて、菌を持った人(発症者)が自覚して、少しでも早く治療を受けて完治し、他の人への感染を防ぐことが求められます。
病院 爪白癬を含め、水虫は、有効な治療薬(内服薬、外用薬)があり、完治が期待できます。高齢者が、水虫に感染した時は、転倒したり、歩行困難にならないよう、出来るだけ早く皮膚科専門医による治療を受けて下さい。自己流の治療や市販薬に頼ると、反対に悪化することがあります。
これから先、7~9月は、高温多湿な日々が多く、食中毒や熱中症の予防だけでなく、水虫対策も大切です。高齢者がいる家庭や福祉介護施設などで、水虫(とくに爪白癬)感染の発生(拡大)が起きないよう、日常、定期的な健康管理の中で、感染者を早く発見し、必要な対策(爪と皮膚のケア、治療、環境衛生管理など)を推進、徹底して下さい。
掲載:2019年7月