ノロウイルス
※本コラムは、2019年5月に執筆されたものを一部編集したものです。
ノロウイルスによる感染性胃腸炎、介護施設などで集団感染が相次ぐ。死者が発生、感染予防対策(手洗い、消毒など)の徹底を!
今季は、ノロウイルスによる感染性胃腸炎(食中毒を含む)が全国的に流行しています。飲食店やホテル、旅館だけでなく、小学校や保育施設、社会福祉施設、医療施設などでノロウイルスによる集団感染の発生が相次ぎ、多数の発症者が出て、新聞等で報道されています。
ここ2ヶ月(3~4月)を見ても、筆者が新聞等で知る範囲で、小学校や保育施設、福祉介護施設、医療施設で、ノロウイルスの集団感染が発生し、多数の発症者と死者が出ています。高齢者が利用する介護施設では、ノロウイルスの集団感染で、死者が発生しています。
ノロウイルスの集団感染は、通常、二つの感染経路が考えられます。
- ウイルスに汚染された食品(食材;二枚貝など)を、加熱不十分な状態で食べる。
- 感染者の糞便や嘔吐物、オムツなどの処理や、感染者が触れたドアノブや手すり、玩具、遊具など物品類を触るなど、手指を介して他の人に二次汚染する。
今季の発生事例のみならず、ノロウイルスの集団感染で死者が発生してしまう要因として、初動対応(患者の早期発見と隔離など)や施設の感染症対策(衛生対策;手洗いや消毒など)などに問題(不備)があると考えられます。感染発生時の初動対応段階で、少数(1~2人)の感染者しか見つからず、感染の状況を軽く見て、もう少し様子を見ようと内部で誤った判断をしてしまう。その結果、行政や外部専門家による指導(助言)が遅れ、対応が後手になって、感染の拡大(死者発生)を招いてしまうこうとも考えられ、初動対応が非常に重要であることがわかります。
また、多くの施設で課題とされる、施設の職員が少数であることも、多忙な中で本来の業務(介護など)に気が取られ、感染症対策が、二の次になってしまう原因のひとつと考えます。
上表の集団感染で死者が出た施設は、リスク管理を見直し、行政等の指導(助言)を受けながら、再発防止対策に取り組んでいるようです。
ここ数年、上記2)の食品(食材)を介しない二次感染(いわゆる"ヒト→ヒト感染")によって、集団感染が発生する事例が増える傾向が認められ、二次感染予防対策の徹底が、より重要になっています。
ノロウイルス感染の発生(拡大)を防ぐためには、ウイルスの感染経路について、1)、2)を含め、あらゆる可能性を考えて、ウイルスの感染を防ぐ、厳格な感染予防対策(衛生対策)が求められます。その取り組みを、自主的にマニュアル化して、マニュアルの通りに手抜きすることなく、必要な感染予防対策を、日常(定期)的に推進、徹底する必要があります。
介護施設や小学校、保育施設は、感染症に対する抵抗力が弱い高齢者や児童、乳幼児などが、集団で生活する場所です。ノロウイルスなどによる感染症が発生すると、感染が広がりやすい状況にあることを十分に認識しておく必要があります。
持病(呼吸器の慢性疾患など)を持った高齢者や、体の抵抗力(免疫力)が低下している人などは、ノロウイルスに感染すると、重症化しやすく、誤嚥性肺炎などの合併症を引き起こして死亡することがあります。
ノロウイルスの感染予防対策として、
- 手洗いを励行する
- 食品(食材)の十分な洗浄、加熱調理を行う
- オムツ類や汚物(嘔吐物、便など)は、使い捨てのマスクや手袋を着用して、適正に処理(消毒、廃棄)する
- 共用物品(調理器具、食器類、玩具、遊具など)や、手すり、ドアノブ、トイレの便座など手が触れる場所(部位)は、こまめに消毒する
- 栄養バランスが取れた食事と、十分な睡眠をとって、体力(免疫力)を保持し、低下させない
- こまめに健康チェックを行って、感染者の早期発見と隔離、受診、治療に努める
- 感染後の合併症(肺炎など)の発生を防ぐため、口腔ケアや誤嚥防止ケアを、日常(定期)的に行う
などの対策が必要です。
自施設で取り組む感染症対策(食中毒を含む)について、今一度、再点検して下さい。もし問題点があれば、速やかに是正(改善)して、ノロウイルス感染の発生(拡大)を防いで下さい。
下痢や嘔吐、発熱、腹痛などの症状が2~3人以上出て、ノロウイルス感染が疑われる時は、早めに医師による受診と治療を受けて下さい。
ノロウイルス感染は、季節に関係なく、上記施設や家庭などで発生し、多数の発症者が出ています。高齢者や子ども(乳幼児を含む)は感染すると、重症化しやすく、注意する必要があります。
保育施設や幼稚園、小学校、医療施設、福祉介護施設などで、ノロウイルスの集団感染が起きないよう、上記手洗いや消毒など必要な感染予防対策を推進、徹底して下さい。 ノロウイルスの感染予防対策などについて、厚生労働省の「ノロウイルスに関するQ&A(最終改定;平成30年5月31日)」や「高齢者介護施設における感染対策マニュアル、改訂版(2019年3月)」で記されていますので、参考にして下さい。
掲載:2019年5月