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口腔ケア・栄養改善・身体の清潔

高齢者の身体の変化

低栄養/フレイル/サルコペニア/ロコモティブシンドローム

後期高齢者が要介護状態になる原因として、認知症や転倒と並んで、「フレイル」があり、低栄養との関連が極めて強いとされています。また、高齢者の身体機能障害の危険因子、転倒の危険因子として、加齢に伴う筋力の減少、または老化に伴う筋肉量の減少を指す「サルコペニア」も注目されています。この病態は、フレイルとも関連が強く、転倒予防や介護予防の観点からも重要であると考えられています。
高齢者が抱える重要な問題として、低栄養やフレイルを中心にご紹介します。


低栄養

低栄養とは、健康的に生きるために必要な量の栄養素が摂れていない状態を指します。
低栄養状態になると、免疫力や抵抗力が落ち、風邪をひいたり、軽い風邪をこじらせて肺炎になるリスクも高くなります。
低栄養の中でも特に、たんぱく質とエネルギーが充分に摂れていない状態のことを「PEM(Protein energy malnutrition):たんぱく質・エネルギー欠乏(症)」といいます。
食事量の減少や偏りが日常化することで、たんぱく質やエネルギーが不足し、PEMとなるリスクが高まります。高齢者では、特にPEMが問題となっており、寝たきりの人はその割合が高くなっています。
PEMは、血清のアルブミンの値が一定以下になっているか、また、体重がどれくらいの割合で減少しているかなどから判断されます。

表:高齢者の様々な低栄養の要因


社会的要因 独居、介護力不足・ネグレクト、孤独感、貧困
精神的心理的要因 認知機能障害、うつ、誤嚥・窒息の恐怖
加齢の関与 嗅覚、味覚障害、食欲低下
疾病要因 臓器不全、炎症・悪性腫瘍、疼痛、義歯など口腔内の問題、薬物副作用、咀嚼・嚥下障害、日常生活動作障害、消化管の問題(下痢・便秘)
その他 不適切な食形態の問題、栄養に関する誤認識

低栄養状態の指標

高齢者の栄養状態を評価する目安になる指標の例です。

  • BMI(Body Mass Index、体格指数)

計算式:体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
日本肥満学会の定めた基準では18.5未満が「低体重(やせ)」と分類されます。

  • 体重減少率
  • 血清アルブミン値

フレイル

フレイルとは、加齢に伴い身体や心のはたらき、社会的なつながりが弱くなった状態を指します。
要介護状態に至る前段階として位置づけられますが、身体的脆弱性だけでなく、精神・心理的や社会的脆弱性などの多面的な問題を抱えやすく、自立障害や死亡を含む健康障害を招きやすいハイリスク状態を意味します。
体重減少、主観的疲労感、日常生活活動量の減少、身体能力(歩行速度)の減弱、筋力(握力)の低下のうち、3項目が当てはまればフレイルとし、1~2項目が当てはまる場合は、フレイル前段階とすると定義されています。

予防のポイント

フレイル予防で大切なことは、早めに気付き、適切な取り組みを行なうことです。日々の習慣を見直すことで、進行を防ぐことができます。

  • 栄養 食事の改善
  • 身体活動 ウォーキング・ストレッチ等
  • 社会参加 趣味・ボランティア・就労等

食事のとり方とたんぱく質の必要性

必要な栄養素をまんべんなく摂るために、3食しっかり摂り、多様な食品や料理を食べることが重要です。
特に、たんぱく質を含む食品をとるように意識します。たんぱく質の摂取量が少なくなると筋肉量が減少し、加齢とともに筋たんぱくの合成が遅くなるため、高齢者はより一層たんぱく質を含む食品をとることが大切です。
また、近年、先進国での人口の高齢化、平均寿命の延伸を背景に、要介護状態になることなく、できるだけ自立した生活を目指すという健康寿命の延伸の重要度が高まる中で、将来の身体機能障害との関連が強い「フレイル」と「サルコペニア」の予防の重要性が注目されています。この予防には、骨格筋とその機能維持であるとされ、骨格筋量や筋力、身体機能は、栄養素ではたんぱく質摂取量と強く関連するため、たんぱく質の重要性が注目されています。



関連用語


サルコペニア

サルコペニアは、ギリシア語で「筋肉」を表すsarxと「喪失」を意味するpeniaを組み合わせた造語であり、「加齢に伴う筋力の減少又は老化に伴う筋肉量の減少」を指します。
筋肉量の減少を必須として、それ以外に、筋力または身体能力の低下のいずれかが存在すれば、サルコペニアと診断すると定義されています。
フレイルの診断項目には、身体機能の減弱や筋力の低下が組み込まれており、サルコペニアとフレイルは密接な関連があることが分かります。

ロコモティブシンドローム

骨や関節の病気、筋力の低下、バランス能力の低下によって転倒・骨折しやすくなることで、自立した生活ができなくなり、介護が必要となる危険性が高い状態を指しています。

低栄養, e-ヘルスネット(厚生労働省), https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/food/ye-021.html,(参照 2022-0208)
BMI, e-ヘルスネット(厚生労働省), https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/metabolic/ym-002.html,(参照 2022-0208)
農林水産省 消費・安全局消費者情報官, シニア世代の健康な生活をサポート 食事バランスガイド, p.13
厚生労働省. 令和元年度食事摂取基準を活用した高齢者のフレイル予防事業, 食べて元気にフレイル予防
厚生労働省. 日本人の食事摂取基準(2020年版) 策定検討会報告書, 令和元年, p.411-417, https://www.mhlw.go.jp/content/10904750/000586553.pdf,(参照 2022-02-08)
・日本サルコペニア・フレイル学会 国立長寿医療研究センター. サルコペニア診療ガイドライン 2017年版,p.2.
ロコモ度テスト, e-ヘルスネット(厚生労働省), https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/exercise/ys-21-07.html,(参照 2022-02-08)